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鏡の中の自分と(縄張り)対決

 人吉郊外の胸川沿いの街道筋に有る有名な食事処で窓に立てかけた大きな鏡に向かって攻撃を仕掛けるヤマセミを撮影された方がいる。時期は2012年の秋。ヤマセミの攻撃性は野鳥の中でも群を抜いている。鏡に映った己を縄張りを荒らしに来た敵と判断して、猛然とくちばしで突く、飛んできて体当たりするなど大騒ぎになる事が多いと聞く。以前南薩摩エリアで老舗旅館の二階の大広間のガラスの引き戸に、春先の繁殖シーズンつがいで交代に体当たりをして、ついにはオスもメスもくちばしの先がそれぞれ少しずつ欠けてしまった状況を目撃した。
 あまりに惨いので、そのガラスの引き戸に葦簀(よしず)を立て掛けるようアドバイス、攻撃は止んだ。しかし今度はその付近から望遠レンズで撮影している筆者めがけてオス・メス共同で攻撃を仕掛けられたのには閉口した。おかげで迫力のある画像が撮れたが、恐怖を感じたのも確かだった。鏡でなくとも単なる窓ガラスに写った己の姿を攻撃する様子は全国のあちこちで観察されているようだ。首都圏の住宅街や行楽地でのカラスの攻撃が最近問題になっているが、人間との共生の中で野生の本能だけはどうしようもない自然の領域なのだろう。