● 川辺川・球磨川流域の山翡翠・生態観察まとめ- 2

■ 全体的な球磨川流域の生態・観察・撮影注意ポイント

  1. 通年つがいで生活・行動している川辺川・球磨川流域のヤマセミは縄張り、採餌場所・休息所もはっきりしているため事前の調査、3日間程度のロケハンさえ行えば観察は比較的しやすい。しかし事前の情報収集、地元の事情通のサポートが無ければまず出遭えないのは他のエリアのヤマセミと同様。「人気野鳥のヤマセミ」を撮影したいと来られた野鳥ファンが地元の事情通のサポートなしに日帰りで撮影できたケースは殆どない。毎年11月後半に開催される日本野鳥の会熊本県支部の「人吉探鳥会」に参加すれば50%程度の確率で出遭えると思われる。これは会員になっていなくても参加可能。
  2. ヤマセミへの遭遇率は同じエリアの猛禽類、カモ類、サギ類、一般野鳥に比べるとそれらの5%程度。川沿い2kmに1つがいが基本的縄張り密度と考えて良い。人吉市中心の流域12kmのエリアに6家族を観察中( 2012年)だが縄張りは固定しており、ファミリーあるいは個体数が増えたという情報はない。日本野鳥の会熊本県支部の情報では個体数は減少中との事だ。毎年巣立った幼鳥はどうなったのかが今後の観察課題。
  3. 年間でパフォーマンスが活性化し、出遭える頻度が高まるのは2月末~5月末の繁殖期で、8月以降1月までは通常の生活パターンであるため余程生活エリアやパターンを把握していないと出遭えることは難しい。一方、球磨川流域の鮎漁の解禁期間は6月~12月と他の河川に比べて長いので、川の中に釣り人が入る期間も長い。特に休日はフライのアングラーや地元の釣り人も入る為ヤマセミが全然別のエリアで採餌する可能性も高く遭えない事が多い。基本的に堤防の歩行者以外の人が川や堤防にいる場合、その100m以内にはヤマセミは来ない。
  4. ヤマセミは最近個体数が減少しているため、日本野鳥の会、地元行政、国交省河川管理事務所などでも保護に努力している。したがって単に野鳥愛好家の欲望を満たす為の度を超えた観察方法や繁殖活動に少しでも影響が出る巣の中の撮影やストロボ撮影は厳禁されている。基本理念・ルールは日本野鳥の会の規範を遵守されたい。観察・撮影時のごみ持ち帰りや自然保全( 動植物採取の禁止)は当たり前。
  5. 球磨川流域の堤防上道路は人吉エリア、特に堤防沿い住居の生活・通勤・配達道路になっている為路上駐車で迷惑をかけることは厳禁。河川河原に降りるスロープ周りは漁業関係者の業務施設の一部であるので出入口附近の駐車は強制撤去される恐れがある。

■ 2013 年シーズンの繁殖スケジュール想定

 本誌の編集作業後半3月半ばからに2013年のヤマセミ繁殖期を迎えたため、2月24日~3月5日、および4月20日~26日と人吉を訪問し繁殖期の観察を続けた。人吉エリア
において引き続き下記の5家族の繁殖行動を注視しているが、年明けの気音変動が激しい今年2013年は桜の開花なども歴代2位の早さで不安定な状況。これがヤマセミの繁殖活動に
どのような影響を与えるか予断を許さないが、従来の平均的な交尾から巣立ちまでの予想を表にしている。求愛給餌行動、交尾行動をベースに、日々の辻 正彦氏からの観察情報メール、
古江之人氏からの採餌状況・画像報告など細かい様子を分析して巣立ちの想定時期を表記してみた。この正確な結果報告は次の出版物で行う予定。昨年2012年は川辺川のつがいはこ
の予定より約40日ほど。これらはあくまで推察の域を出ていない。大体の目安としている。

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